ものづくりの現場に欠かせない「測る」という行為。
長さ寸法、温度、圧力、重さ、電気量――これらの測定結果は、製品の品質を左右するだけでなく、企業の信頼や安全性にも直結します。
その測定結果が「正しい」と言えるために必要なのが、計測器の【校正】です。
校正とは、測定器が示す値が「本当に正しいのか」を確かめ、必要に応じて補正値を求める作業のことです。時間の経過や使用環境の影響で、測定器は少しずつズレていきます。
このズレを把握し、誤差を小さくすることで、測定結果の信頼性を維持するのが校正の役割です。
どんなに精度の高い測定器でも、次のような要因で誤差やばらつきが発生します
▲ 測定方法の理論と現実の差
▲ 装置そのものの誤差(部品の摩耗・構造上のズレ)
▲ 測定環境(温度、湿度、振動、電磁波など)の影響
▲ 測定者による読み取りや操作ミス
これらをゼロにすることはできません。だからこそ、「どの程度ズレているか」を把握し、適切に管理することが大切なのです。
1回測っただけで得られる値は、本当に正確でしょうか?
例えば寸法100.0 mmを測った時:
1回目は「100.0 mm」と表示されたとしても、それが偶然かもしれません。
2回目に「99.8 mm」と出れば、どちらが正しいのか迷います。
3回、4回、5回と測定を繰り返すことで傾向が見えてきます:
3回目:「100.1 mm」
4回目:「100.0 mm」
5回目:「100.1 mm」
このように、「この測定器はおおよそ100.0 mm前後を示している」という傾向がわかり、測定値のばらつきや安定性を評価できるのです。
実務では、作業効率や現場の実情も考慮し、4回~10回程度の繰り返し測定が現実的な目安とされています。
校正の主な目的として以下のような項目が挙げられます。
校正を行った証として発行されるのが「校正証明書」です。この証明書には、使用した標準器・校正方法・測定結果・不確かさの評価などが記載されており、校正作業が適切に行われたことを示す重要な記録となります。
しかし、単に「校正しました」という証明書だけでは、その測定値がどこまで信頼できるかを説明しきれません。そこで重要になるのが、ISO/IEC 17025に基づく運用です。
ISO/IEC 17025は、校正や試験を行う機関が、トレーサビリティの確保や不確かさの適切な評価、標準器の管理、技術者の力量維持など、信頼性を裏付ける体制を持っていることを第三者が認定する国際規格です。
つまり、ISO/IEC 17025に基づく管理体制のもとで発行される校正証明書であれば、その裏付けとして「計量トレーサビリティが確保されている」ことを証明できるのです。
このように、校正証明書はISO/IEC 17025という信頼の枠組みによって支えられ、その結果として測定値のトレーサビリティが保証される仕組みになっています。